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子供の名作本には、大人になっても忘れないで!という熱い想いが詰まってる。

現実がつまらない。
デブだとかノロマだとか、人の身体的特徴を
あげつらい、ばかにする。空想し、創造し、
新しい物語を思いついても、誰も耳を傾けない。
それどころか、その空想をもバカにする。表面的
なことにしか興味を示さず、想像力のかけらも感
じない。少年は、現実なんて、そんなつまらない
ものだと感じていた。

ある日少年は一冊の本に出会い、その本を読み
進めるうちに、その「本の中の世界」から自分が
必要とされていることに気づく。そう、その本は
その少年のために書かれた本だったのだ。

少年は決意する。
自分が求められている世界へ行こうと。
そうして、少年は本の中の世界へ入っていく。
少年はその世界(ファンタジー)では、ヒーロー
だった。現実にはなかったものが次々と与えられ
ていく。容姿端麗、強さ、勇気、現実の世界では
持っていなかったものが、すべて与えられる。す
ぐに少年は、その全知全能性に酔いしれてしまう。

しかし、その能力はすべて、本の中の世界を司る
女神から与えられた「おしるし」によって得られる
特殊なチカラだった。しかもそのチカラは、使えば
使うほど現実世界での記憶を失っていくという危険
と引き換えにしか使うことはできないのだ。

でも、現実世界での記憶は、ちっぽけで醜く、つま
らなくてダメダメな自分自身としての記憶しかない。
だからこそ、たとえ記憶を失ってしまったとしても、
この世界での地位を高め、力を手に入れ、尊敬を集め
たいという欲望を抑えきれなくなってしまう。たとえ
その幻想の世界では、現実の記憶を失ってしまうと、
もう二度と元の世界へは戻れなくなってしまうとわか
っていても…。

最後にこの少年がどのような選択をするのかはここ
では書かないことにするけど、ここに書かれている
「おしるし」とは、お金(富)のことだと僕は思う。

僕たち人間は、お金を得ると、何でもお金の力で手に
入れることができると思ってしまう。何でもお金で解決
していけばいくほど、これまでの自分なんて無かったみ
たいに振る舞うようになる。みすぼらしかった自分、
知恵も勇気もなく、いつもウジウジしてた自分の記憶に
蓋をして、昔から成功者だったかのように振る舞うよう
になる。僕も、そんな風に変わっていく人たちをたくさん
見てきたから、この主人公の様子と重なるわけです。

僕だって今はごくごく普通の生活してるからいいけど、
もし何か間違って大金や、地位や名誉を手に入れてしま
ったら、今のままでいられるかなんて、分からない。

人間って、ほんと愚かだなー、安易だなーって思う。
大切なものを守ることよりも、いま目の前にある現実を
どうにかしようとすることを優先してしまう。そんな表
面的で即物的なもののために、大事な魂を売り渡してし
まう。

何のために生きるのか?
本当に大切なものって、何なのか?
僕たちは、「何か」や「誰か」に支配されていないか?
この本を読んで、改めて考えさせられたわけです。

この本を読み終えた時、僕は大好きな別の本の中に登場
する、こんなフレーズを思い出した。

 

「さようなら」王子さまは言った・・・
「さようなら」キツネが言った。
「じゃあ秘密を教えるよ。
とてもかんたんなことだ。
ものごとはね、心で見なくてはよく見えない。
いちばんたいせつなことは、目に見えない」
「いちばんたいせつなことは、目に見えない」
忘れないでいるために、王子さまは繰り返した。
「きみのバラをかけがえのないものにしたのは、
きみが、バラのために費やした時間だったんだ」
「ぼくが、バラのために費やした時間・・・」
忘れないでいるために、王子さまはくり返した。
「人間たちは、こういう真理を忘れてしまった」
キツネは言った。
「でも、きみは忘れちゃいけない。
きみは、なつかせたもの、絆を結んだものには、
永遠に責任を持つんだ。
きみは、きみのバラに、責任がある・・・」
「ぼくは、ぼくのバラに、責任がある・・・」
忘れないでいるために、王子さまはくり返した。

「星の王子様」サン=テグジュペリ

 

そう、僕たちはすぐに、大切な大切な真理を見失う。
だから、僕たちは子供のために書かれた名作を
読まなくちゃならないと思う。
子供のために書かれているようで、実はそれは、
子供が大人になっても忘れてしまわないように、
という想いを持って書かれた「真理」が、
そこにあるからです。

ミヒャエル・エンデ、ありがとう!!!

はてしない物語(岩波少年文庫) 上・下セット