2017年10月

本の森017 彼女がその名を知らない鳥たち 沼田まほかる(幻冬舎文庫)

どうして、そんな重たくて暗くて、苦しい、
そんな小説ばっかり読むんですか?

そんなの読んで、何か役に立つんですか?
そんなことを言われることがある。

どうして読むのかと聞かれると、
⑴好きだから
⑵暗いから
⑶弱いから
だと答える。

でも、役に立つのかと聞かれたら、
少し考えて、こう答える。

「少なくとも僕は、こういう小説に支えられて生きている」と。

沼田まほかるの描く世界は、暗い。
悲しい、苦しい、醜い、弱い、ひどい…
その他、ありとあらゆる種類のネガティブワードが
思い浮かぶ。でも、確かに読んでいて本当に辛いけど、
やはり僕は、そういう作品に支えられて生きてるって
感じる。人間の魅力、愛、そういう奥深さを学ばせて
もらってるって思う。

でも、この作品、
「彼女がその名を知らない鳥たち」
を読み終えた直後に感じたのは、やっぱり
「きついなー」
ってことだった。

やばい、ひどい、苦しい。
どうしてこんなことになってしまうのか?
もっと、まともで普通に生きられなかったのか?

人はこんなにも脆く、危うい存在なのか?
僕の中にも、そんな脆さが、危うさが、
息を潜め、じっと出番を待っているのだろうか?

ファンタジーだと思いたいけど、そうはいかない。
小説を読んでいる間中、僕が感じていたのは、
リアルで、血の通った生々しい感情だった。

なぜだろう。
こんなにも非現実的で狂気の沙汰としか思えない、
ありそうもない物語に引き込まれてしまうのは。

沼田まほかるの描く世界には、僕たち人間の、
どうしようもない弱さや醜さがある。
みっともないほどの渇きや、
愛されることを求めずにはいられない弱さ。
そんな、人間の「どうにもならなさ」に、
僕はいつも、目をそらしたくなる。
耳を塞ぎたくなる。

でも、この作家はひどい。
僕たちの目を釘付けにし、自分の弱さや、
惨めさと向き合わざるを得ない状況へと追い込む。
だから、読み終えた時、ひどく疲れる。
ため息をつかざるを得ない。

「これを恋と呼ぶのなら、私はまだ恋を知らない」
エッセイストの藤田香織は、この作品をそう評した。
そう、この本は、それくらい壮絶な恋物語だ。

大変月並みな言い方かもしれないけれど、
人間は、弱い。
僕たちは、みっともない。
でも、どうしようもなく愛おしい。

今回もまた、僕は沼田まほかるにやられてしまった…

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