映画館で8回も観たのは、この映画くらいかなー。
高校2年生の時だった。
僕は学校の寮で生活をしていた。
そこには中1から高3まで約200人が暮らしていた。
ある日、僕は可愛がっていた後輩の様子が変だと気付いた。
僕は後輩を連れ、寮長の目を盗んで学校をサボり、街に出た。
「どうしたの?」
とも、何も聞かなかった。
僕たちは日比谷シャンテという映画館へ向かった。
よく晴れた秋晴れの日だった。
映画館で2人分の金を払い、僕は8回目となるこの映画を観た。
映画が終わると、デパートの地下でパンを買い、
日比谷公園のベンチで食べた。
上映中、後輩が何度か涙していたことには触れなかった。
日比谷から吉祥寺に移り、井之頭公園や動物園をブラブラした。
夜になると、行きつけのJAZZバーに行った。
高校生の割には老けていた僕は、バイトで稼いだ金で
この店でボトルを入れ、生演奏を聴きに来ていたのだ。
完全なるオヤジ高校生だ(笑)
演奏が終わ理、店内が落ち着いた雰囲気になって来たとき、
後輩が突然泣き出した。
わぁーっとではなく、さめざめと涙を流し始めたのだ。
一通り泣き尽くすと、後輩はすっきりした顔で言った。
「僕も飲みたい」
さて、この映画は子供達が主人公だ。
思春期の、様々な問題を抱えた少年少女たちの、
ささやかな物語だ。
大人にとってはささやかな問題かもしれないけれど、
子供達にとっては人生を左右する大きな問題だ。
大きな問題に直面する子供達の周りには、
様々な大人たちがいて、人々と自然と、そして世界が、
主人公の心の傷を癒していく。
そんな物語だ。
僕は8回中5回は、悩みや問題を抱えた後輩を連れて、
この映画を見に行った。
この映画を見終わった後、多くの後輩の表情が、
柔らかくなったような気がしていた。
この映画は、そんな映画だった。
後日、僕はこの本(原作)を読んだ。
原作は、映画と同じだった。
よく、原作の方がいいとか映画の方がいいとか、
色々と議論されているけれど、この作品の場合、
どちらも同じだった。
世界が優しさに溢れているなら、
子供達はまっすぐに生きていくことができる。
そんなことを感じさせてくれた、最高の作品です。