本の森040 マイライフ・アズ・ア・ドッグ レイダル・イェンソン 木村由利子訳(世界文化社)

映画館で8回も観たのは、この映画くらいかなー。

高校2年生の時だった。
僕は学校の寮で生活をしていた。
そこには中1から高3まで約200人が暮らしていた。

ある日、僕は可愛がっていた後輩の様子が変だと気付いた。
僕は後輩を連れ、寮長の目を盗んで学校をサボり、街に出た。
「どうしたの?」
とも、何も聞かなかった。

僕たちは日比谷シャンテという映画館へ向かった。
よく晴れた秋晴れの日だった。
映画館で2人分の金を払い、僕は8回目となるこの映画を観た。

映画が終わると、デパートの地下でパンを買い、
日比谷公園のベンチで食べた。

上映中、後輩が何度か涙していたことには触れなかった。
日比谷から吉祥寺に移り、井之頭公園や動物園をブラブラした。

 

夜になると、行きつけのJAZZバーに行った。
高校生の割には老けていた僕は、バイトで稼いだ金で
この店でボトルを入れ、生演奏を聴きに来ていたのだ。
完全なるオヤジ高校生だ(笑)

演奏が終わ理、店内が落ち着いた雰囲気になって来たとき、
後輩が突然泣き出した。
わぁーっとではなく、さめざめと涙を流し始めたのだ。
一通り泣き尽くすと、後輩はすっきりした顔で言った。
「僕も飲みたい」

さて、この映画は子供達が主人公だ。
思春期の、様々な問題を抱えた少年少女たちの、
ささやかな物語だ。

大人にとってはささやかな問題かもしれないけれど、
子供達にとっては人生を左右する大きな問題だ。

大きな問題に直面する子供達の周りには、
様々な大人たちがいて、人々と自然と、そして世界が、
主人公の心の傷を癒していく。

そんな物語だ。
僕は8回中5回は、悩みや問題を抱えた後輩を連れて、
この映画を見に行った。

この映画を見終わった後、多くの後輩の表情が、
柔らかくなったような気がしていた。

この映画は、そんな映画だった。
後日、僕はこの本(原作)を読んだ。
原作は、映画と同じだった。

よく、原作の方がいいとか映画の方がいいとか、
色々と議論されているけれど、この作品の場合、
どちらも同じだった。

世界が優しさに溢れているなら、
子供達はまっすぐに生きていくことができる。

そんなことを感じさせてくれた、最高の作品です。

マイライフ・アズ・ア・ドッグ

保存保存

PREVIOUS / NEXT